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About GPS


GPS(Global Positioning System)は、日本語では『全地球測位システム』と呼ばれ、アメリカによって開発され、運用されている衛星測位システムです。

GPSは元来、軍事的利用のために開発されたシステムですが、現在民間の利用が認められ、全世界の利用者に無償で開放されています。 ただし、民間には開放されていない信号もあります。

GPSの目的は、
1 - 船舶や航空機がリアルタイムに現在の位置を知り、目的地までの距離方向・ルートを探索する「航法支援」
2 - 遠く離れた位置で通信する場合の正確な「時刻同期」    の2つです。 
副次的に「測地・測量」などにも利用されています。



GPS衛星は、6つの軌道に合計31機配備され、地球上のどこからでも常時4機以上の衛星が良好な幾何学的配置のもとで観測できるように運用されています。

GPS衛星は、ルビジウム(Rb)やセシウム(Cs)を用いた原子時計を搭載し、高精度の時刻を刻んだ信号を乗せた電波を地球に向けて送信しています。 さらに測位計算(位置測定)のために衛星軌道情報などの情報をこの信号に重ねて送信しています。 

GPS衛星から送信される電波(搬送波)には、L1帯(1575.42MHz)とL2帯(1227.6 MHz)と呼ばれる2つの周波数帯の信号があります。 

衛星からの情報については、当初、民間利用向けにあえて誤差を付加する操作が行われていましたが、2005年5月に解除され、現在では誰もが正確な情報を入手することができます。




GPSの位置測位


VBOXで採用されているGPSの測位方法は、3種類です。


[単独測位]
カーナビゲーションシステムなどで採用されている最も基本的な測位方法です。 
位置精度は3m程度
単独測位の基本コンセプトは宇宙空間で位置のわかっている衛星から地上未知点までの距離を測定することです。 そして、複数の衛星からの距離を同時に測ることにより地上未知点の位置を決定します。 



その概略のプロセスは次の通りです。

@ 衛星からの距離計測
GPS衛星は極めて安定した原子時計を搭載し、高精度の時刻を刻んだ信号(コード)を乗せた電波を地球に向けて送信しています。 GPS受信機の内部にも時間を刻む水晶時計が組み込まれており、受信機側で受信したデータを基に、衛星から受信機までの電波伝搬時間を計測します。 この電波伝搬時間に光速度を乗じることによって衛星から受信機までの距離が得られます。

A 衛星位置の計算
衛星の位置は、衛星電波に乗っている軌道情報(アルマナック)から受信機側で計算されます。

B 測位計算
測位計算は、@Aで求められた値を利用して計算されます。 まず、受信機の3次元位置(x, y, z)を決定するためには、既知点である3個の衛星からの電波を受信して、衛星と受信機間の距離を計測します。 3つの既知点とその距離が分かったので、未知点を求める3次元方程式を解くことによって受信機の位置を求めることができます。  
しかし、実際の測定では衛星を最低4つ受信しないと位置を求めることが出来ません。 その理由は、受信機内の水晶時計が、衛星の原子時計に比べ精度が劣っているためです。 その結果、計測された伝搬時間には受信機の時計誤差を含んでしまいます。 そこで、受信機の時計誤差を未知数(t)として扱い、位置の未知数と合わせて計4つの未知数を解くことで、受信機の位置を求めることができます。



[DGPS]
Differential GPS(相対測位方式)。 基本的な位置測位の原理は単独測位と同じですが、測位対象となる移動局のほかに、位置のわかっている固定基地局でもGPS電波を受信し、誤差を消去する方法です。
固定基地局で生成された補正情報を送信し、移動局で受信することで、リアルタイムでDGPSの補正処理を行うことができます。 
誤差0.4m程度





[RTK測位]
Real Time Kinematic GPS(干渉測位方式)。 

RTK測位は、ディファレンシャル測位と同じように2台の受信機を使用します(1つは固定基準局、もう一つは移動局)。 ディファレンシャル測位と異なる点は、受信機から衛星までの距離を
搬送波の波数と位相差から求めることにあります。

まずRTK測位では、それぞれの受信機において観測される搬送波位相を測定します。 位相は受信機内で搬送波のレプリカを発生させ、比較をすることで知ることができます。 しかし、その間にいくつの波数(整数値バイアス)が存在するのかはわかりません。 次の手順として、この整数値バイアスを決定する必要があります。

この整数値バイアスの決定には『推測→収束』の手順で行われます。 始めの推測値は前項で説明した単独測位の受信機を2台使用したディファレンシャル測位より求められます。 その解から候補範囲を推測し、収束させていきます。 
収束解を得るまでに若干の時間が掛かりますが、整数値バイアスが決定すると2cm CEPの位置精度を提供します。

また、整数値バイアスが決定した後は常に位相差を積算してきます。 RTK測位の受信機は、およそ0.75mmの分解能で波長(衛星から受信機までの距離)を測定することができるので、位置精度2cmという高精度な測定を維持しています。

なお、単独測位で使用するL1 C/Aコードによる距離の分解能は、6cmが現在のところ限界となっています。
RTK測位では、整数値バイアスが決まるまでの間に30秒程度の時間がかかります。 整数値バイアスが決まるまでの解をフロート解(推測解)呼び、その精度は
20cm CEP RMSです。 そこから収束をしていきFIX解が決まると精度は2cm CEP RMSとなります。




GPSの速度測定


GPSは本来、位置情報を得る手段として開発されたものです。 ところが、一般的には知られていませんが、他の機能としてGPS受信機は移動体の速度情報を知ることもできます。 そして、その速度情報は位置情報に比べ、非常に精度良く測定することができます。  

GPSを用いた速度測定には2種類の方法があります。 1つ目は、2点の位置から距離を求め、その2点間を移動するのにかかった時間から車両の速度を得る方法です。 しかし、この方法は位置測定の精度が悪いGPS受信機では利用できません。  

そこで、開発されたものが2つ目の方法であり、これは搬送波の
ドップラー効果を利用する方法です。 GPS衛星は、非常に安定した一定の波長・周波数の波を出しています。 そして、衛星が受信機から遠ざかる(近づく)、または受信機が衛星から遠ざかる(近づく)ことにより、受信機が受信する搬送波の周波数は連続的に変化します。 この周波数の変化から移動体の速度を計算することができます。



GPS信号のドップラー効果を利用して速度を求める方法では、一つの衛星から一つの解を得ることが出来ます。 GPS受信機は得られた解の平均値を速度信号として出力しているので、衛星を多く受信していれば、それだけ精度の良い測定が行えることになります。

また、電離層等の誤差要因をほとんど受けないため、非常に高い精度で測定することができます。  


一般的に速度は北速度、東速度、垂直速度として求められ、北速度と東速度は合成され、水平速度とされます。

水平速度精度 0.1 km/h 
垂直速度精度 0.2 km/h



方位は、北速度と東速度のベクトル合成により算出されます。    

方位精度 0.1°




GPSエラー


GPS測定には、マルチパスと呼ばれるエラーがあります。  
それは、下の図のように衛星から発射された電波が建物や樹木などで反射し、別の経路で受信機に届く現象です。

前項で、測位計算は衛星から送られてくる搬送波の到達時間により、距離を求め、4次方程式を解くことで位置を計算することを確認しましたが、建物で搬送波が反射してしまうと、その分だけ衛星と受信機との見かけの距離が長くなり、結果として位置の誤差を引き起こします。

速度の計算も同様に、反射波を読み取ってしまうと、直接受信した搬送波とは全く異なる周波数を受信してしまいます。  

マルチパスは、様々な障害物(建物、樹木、電線、地表など)で発生します。 GPS受信機を使用際には、受信機のアンテナより高い位置に障害物がなく、空が広く見える場所で使用することを推奨します。 なお、地表からの反射は車両ルーフ(金属板)の上にアンテナを設置することで防ぐことができます。  GPS受信機を街中で使用する際には、そのデータ解析に十分注意をしてください。